……固着、か。
フッ……普通の奴ならそこで青ざめて諦めるだろうな。
終わった、面倒だ、もう捨てちまえ……そうやって投げ出すのさ。
だがな、本物のメカニックは違う。そう言われた瞬間に、ニヤリと笑うんだよ。
これから始まる辛く長い地獄(たたかい)に、ゾクゾクしながらな……。
競輪自転車や、古いスクエアテーパーのBB右ワン。あいつは悪魔だ。
固く閉ざされたそのネジ山ひとつ外すために、どれほどの人間が涙を流してきたか。
俺だって104サイクルのメカニックとして、何度もそいつと刺し違えてきた。どうしても外れず、骨骨(骨組み)を残したまま葬り去ったフレームが何本あったか……。夜、一人作業場で「もうダメなのか」と途方に暮れたこともある。何度も怪我をし、血を流した。だがな、乗る奴の命を預かる以上、退くわけにはいかねえんだよ。
その壮絶な戦いに、ようやく終わりの時が来たのかもしれない。
RUNWELL「URAGATAME36」
こいつをセットした瞬間、わかるんだ。体に伝わる剛性感が、今まで使ってきたどんな工具とも根底から違う。ネジ山と工具が、狂いもなく完璧に噛み合って一体になる……あの感覚だ。
「これでも外れねえなら、もうそこまでだ」
そう思わせるだけの理由が、この工具にはある。
固着に苦しんでる命知らずのメカニックがいるなら、迷わず試してみろ。地獄の果てで見据えてきた俺が推す、最後の決定版だ……