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コレクションホールのRS360Tと、倉庫のTLR200。そして、すべてのルーツである「BTR」の話。

コレクションホールのRS360Tと、倉庫のTLR200。そして、すべてのルーツである「BTR」の話。

児玉利文|

今回のMotoGP観戦の帰りに、ホンダコレクションホールに立ち寄った。 (sfiDARE CRIT常連の荻野夫婦のアテンドです。ありがとうございました。)

そこで頭をガツンと殴られたようにぶっ刺さったのが、あの「RS360T」だ。

エディ・ルジャーンが駆り、1984年・1985年と世界選手権を制した伝説の4ストローク・ワークスマシン。 2ストローク全盛の時代に、ホンダが「4ストロークで勝つ」という圧倒的な執念をカタチにしたあの佇まい。エンジンフィン、スチールパイプのダイアモンドフレーム、乾燥重量88kgという極限の作り込み。当時の開発陣の狂気すら感じる情熱が、今見ても生々しく宿っている。

あの空間は反則だ。時間を忘れていつまでも眺めていられる。

親父と並んでいじった、TLR200の記憶

思えば、私のバイクの原点はすべて親父にある。 現役の競輪選手だった親父が若い頃からトライアルに夢中になっていて、家にはいつもバイクがあった。

中学生の頃、その親父と一緒に、ガレージで並んでTLR200をいじり倒したものだ。 空冷4ストローク単気筒の粘り強いトルク。220ccにボアアップして、アルミのマフラーに換えて排気音と抜けを良くしたり、シートを自分好みにリフレッシュしたり。「ここはこうしよう、ああしよう」と親父と語り合いながら、自分の手で工具を握る。自分の手で触って、構造を理解し、手を加えた分だけバイクが答えてくれる。あの頃のワクワク感と、親父の背中を見ながら過ごした時間は、自分にとっての揺るぎないバイクの黄金期だ。

時を経た今も、その相棒は我が家の倉庫の片隅にひっそりと眠っている。 横目に見るたび、「いつか親父とやったように、もう一度綺麗に復活させてやりたいな……」と思いつつ、現実の忙しさに負けて「また今度な」と、そっと扉を閉める。 まあ、あの頃と変わらず、いつだってじっと待っていてくれる相棒がいるというのは、それだけで贅沢なことなんだけど。

バイクトライアル(BTR)から、バンクの世界へ

そんなルーツを持つ私が、プロの競技者として選んだ道は、親父と同じ「競輪」だった。 30年間、競輪選手としてバンクを駆け抜け、2024年に引退した。

だが、自分の身体の奥底にあるルーツをたどれば、まぎれもなく「BTR(バイクトライアル)」に行き着く。 ペダルを踏み込み、車体を操り、信じられないような障害物をクリアしていくあの身体感覚やバランスの極意は、間違いなくアスリートとしての土台となり、シビアな勝負の世界を戦い抜くための武器になっていた。

スピードの向こう側にある「極限のバランスとコントロール」。 それを知っているからこそ、ロードレースとはまた違う、トライアルという競技の底知れない深みが体に染み込んでいる。

次は、もてぎで「現代のトライアル」を浴びる

MotoGPの熱狂を味わった今、ふと心に火がついた。 あのコレクションホールで胸を熱くさせ、倉庫で眠るTLR200と親父との記憶に思いを馳せたなら、次は――生で「現代のトライアル」を見に行こうと思う。

モビリティリゾートもてぎで開催される世界選手権。 BTRをルーツに持ち、元・競輪選手という「プロの眼」を持った今の自分が、現代のトップライダーたちの走りや、進化し続けるマシンの挙動を見たとき、いったい何を感じるのか。

あのエンジン音を間近で浴びたら、きっとまた、少年の頃に親父とガレージで夢中になっていたあの日に戻ってしまうに違いない。

さて、そろそろ倉庫の扉を、少しだけ本気で開けてみる準備をしようか。

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