Toshiだ。
フェリーの重厚なエンジンの振動が、足裏を通じて全身に伝わってくる。
潮風の匂いに混ざる、張りつめた冷たい朝の空気。
今回の旅は、俺自身が走るためじゃない。
人生という巨大な勝負に命がけで挑む、受験生(選手)たちのサポートだ。
思い返してみろ。
彼らが歩んできた道のりは、決して綺麗事なんかじゃなかったはずだ。
思うようなタイムが出ず、孤独にもがき苦しんだ夜。
予期せぬ怪我や、自分ではどうにもできない不条理を前に、悔し涙を呑んでただ立ち尽くすしかなかった瞬間。
それでもヤツらはペダルを止めるのを拒んだ。 何度挫かれても立ち上がり、泥をすすり、愚直に、狂おしいほどにペダルを回し続けてきた。
傷ついてはかさぶたになり、また新しい傷をつくる。 そんな「かさぶただらけの毎日」を積み重ねて、今日という日のスタートラインにたどり着いたんだ。
遠回りも、挫折も、悔しさも、何ひとつとして無駄なものなんてねぇ。
泥臭く足掻いてきたその血と汗の歴史こそが、土壇場で己を支える最強の武器になる!
朝焼けに染まる海を眺めながら、
そこで、俺は自分に問う。
「やれることはやり尽くしたのか?」
機材のコンマ一ミリの精度、ミリ単位の妥協なきセッティング、万全の準備。
サポートする側の俺自身に、一分の甘えや嘘はないか?
答えは胸の中にある。 やれることは全てやり尽くした。
準備は、完全に整った。
船体が岸壁に近づき、静かにランプが降りていく。
朝日の向こうに広がる小倉競輪場。
そこが、ヤツらが己の人生を証明する「舞台」だ。
さあ舞台に立て。
怖がる必要なんて一切ない。
葛藤も、不安も、かさぶたも、その高鳴る鼓動も、全てをエネルギーに変えろ!
自分の未来に向かって、魂の限りペダルを回してこい!
俺は最高の状態で、お前たちの背中を送り出す!